第九番 芒種(ぼうしゅ)


第九番 芒種(ぼうしゅ)

雨を受け、種をまく
大地に命を託すとき


しっとりとした雨が野山を潤し、田畑には柔らかな水が満ちていきます。
初夏の光に包まれながら、田植えや種まきが本格的に始まる季節。

「芒(のぎ)」とは、稲や麦など、穂先にあるとげ状の部分のこと。
その名のとおり、稲作に欠かせない種まきや田植えの時期を示す節気です。

――季節は、「芒種(ぼうしゅ)」へ。

田の水面には、青々とした苗が一列に植えられ、風にそよぐ姿が映ります。
畑では夏野菜のつるがぐんぐん伸び、草木は日ごとに濃い緑をまとっていきます。
梅の実がふくらみ、やがて青梅の香りが台所に届く頃でもあります。

農村では、人びとが一斉に田植えに精を出す時期。
一株一株、泥に手を沈めながら苗を植える営みは、
まさに「大地に命を託す」祈りのような光景です。

やがて訪れる梅雨は、時に厄介でありながらも、
稲が根を張り、実りへと向かうために欠かせない恵み。
水と土と太陽が調和し、稲作の季節が幕を開けます。

草いきれの中に混じる、青梅の爽やかな香り。
雨粒をまとった紫陽花の色。
野に響くホトトギスの声。

芒種は、夏の深まりを告げる合図のように、
人びとの暮らしに静かな緊張と、確かな恵みを運んでくれる季節です。


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1.【芒種】とは

二十四節気の第九番目にあたる「芒種(ぼうしゅ)」は、例年6月6日ごろ。
「芒(のぎ)」のある穀物――稲や麦など――の種をまく頃を意味します。

この時季から梅雨入りを迎え、雨がしだいに多くなります。
雨は農作物を育てる恵みであると同時に、日々の暮らしを形づくる大切な要素。
その恵みを受け止めながら、田植えを進める人びとの姿が、
古来より「芒種」の風景として語り継がれてきました。

芽吹いた命を大地に託し、やがて秋の実りを願う――
「芒種」は、夏の始まりと、実りへの祈りが重なる季節。

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