第六候 草木萠動(そうもく めばえ いずる)

—朝日を浴びた山々で、霞がたなびき始める頃—

春の陽ざしが少しずつ力を増し、やわらかな光が大地を包むころ。
霞がふんわりとたなびく山々では、草木たちがそっと動き始めています。
「草木萠動(そうもく めばえ いずる)」――
土の奥でじっと眠っていた命が、春の気配に誘われて、地表へと顔をのぞかせる時季です。

「萠(めばえ)」という文字は、「芽吹き」よりもさらにやわらかく、ふくらみかけた小さな命の気配を含んでいます。
まだほんの小さなふくらみ、ほんの少しの色のにじみ。
けれどそれは確かな命のしるしであり、春という季節が大地にもたらす贈りものです。

野の草は少しずつ青みを帯び、木々の枝先には小さな芽がふくらみ始めます。
その変化はとても静かで、ふとした瞬間に気づくようなもの。
けれど、気づいたときのうれしさは、まるで自分の中にも春が芽吹いたかのように、心をやわらかく解きほぐしてくれます。

また、草木の芽吹きは、動物たちや虫たちにとっても、新しい季節のはじまりの合図。
冬のあいだ静かにしていた命たちが、少しずつ動き出し、季節の舞台が本格的に開かれてゆくのです。

春は、一気に花が咲き誇るような華やかさではなく、こうした静かな目覚めから始まります。
それは、見過ごしてしまいそうなほどの小さな変化かもしれません。
けれどその小さな芽にこそ、生命のつよさと美しさが宿っています。

やわらかな朝の光のなか、ほんの少し目線を落として、足元の草や木に目を向けてみてください。
そこには、春のいのちが、確かに動き出している気配があります。

そんな芽吹きの季節に、あなたの心にも、あたらしいやさしさがふくらみますように。


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