
—冷たい雪が、あたたかな春の雨に変わる頃—
冬の間、かたく凍りついていた大地が、ほんのりとやわらぎはじめる季節。
空から舞い降りていた雪は、いつしか静かな春の雨へと姿を変え、その雫は土の奥深くまで沁みこんでいきます。
「土脉潤起(つちのしょう うるおいおこる)」とは、地面の脈―すなわち、大地の奥にある生命の通り道が、春の雨によって潤い、動き出すという意味をもつ言葉。
眠っていた土が、ぬくもりを感じて目を覚まし、静かに、そして確かに命の循環が始まる頃です。
その潤いは、やがて草木の芽吹きをうながし、小さな虫たちを呼び起こし、野や山のあらゆる命をそっと目覚めさせるのです。
人の気配が少なかった冬の野山にも、しっとりとした音や気配が戻ってきます。
雨粒がやさしく土を打つ音、水たまりをかすかに駆け抜ける生き物の気配――。
「土が潤う」ということは、命のはじまりと深く結びついています。
まだ目には見えないけれど、確かな希望が足元からそっと立ちのぼってくるような感覚。
そんな気配が、この時季の空気には満ちています。
寒さの余韻を残しつつも、一雨ごとにあたたかな雨が美しき春を運びます。
その雨音に耳を澄ませながら、新しい季節の息吹をそっと感じてみませんか。
二十四節気
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