
第六番 穀雨(こくう)
やわらかな雨が、種を包みこむころ
春のしずくが、大地をゆっくりと潤すとき
木々の若葉が日に日に色を濃くし、
地面にはやわらかな草がしっかりと根を張りはじめるころ。
「穀雨(こくう)」とは、
“百の穀物を潤す春の雨”という意味をもつ、二十四節気のひとつです。
それまで不安定だった気候も、このころになると落ち着きを見せ、
霜が降りることもほとんどなくなります。
しとしとと降る春の雨は、
田畑にまかれた種をやさしく包み、
芽吹きを促すように、土の奥までしみ込んでいきます。
南の地方では、はやくも田植えの準備が始まり、
空には軽やかな羽音とともに、トンボの姿も見かけるように。
日ごとに伸びる草木の生命力とともに、
自然も人も、次の季節へ向けて歩みを進めていきます。
衣替えの支度や、冬ものの片づけにちょうど良いころ。
衣や住まいも、春から初夏へと静かに移ろっていく季節です。
そして、やがて迎える「立夏」――
季節は、まもなく春の終わりと夏のはじまりへ。
1.【穀雨】とは
穀雨(こくう)は、二十四節気の第六番目。
例年、4月20日ごろにあたります。
「穀雨」は、「穀物を育てる雨」と書くように、
春のやさしい雨が田畑を潤し、農作物の生育を助ける頃。
昔からこの時季は、種まきや田植えの準備に最適とされてきました。
「清明」で雪の心配がなくなり、「穀雨」を迎えると霜も下りなくなる。
そんな気象の変化は、農事暦においても大きな節目となります。
この節気を境に、春のしっとりとした気配はやわらかく色を変え、
初夏の光と風をはらんだ、新しい季節へとつながっていきます。
自然の移ろいと共に、私たちの暮らしもまた、
そっと次の季節の準備を始める――
そんな「晩春」の恵みに満ちた静かなときです。
雨水の【七十二候】
雨水のころの「七十二候」をご紹介します。
雪解けと共にじんわりと動きだす大地。
季節が動き始めるのは、まずは水の流れから。
【初侯】第四候 土脉潤起(つちのしょう うるおいおこる)
冬の間、かたく凍りついていた大地が、ほんのりとやわらぎはじめる季節。

空から舞い降りていた雪は、いつしか静かな春の雨へと姿を変え、その雫は土の奥深くまで沁みこんでいきます。
「土脉潤起(つちのしょう うるおいおこる)」とは、降り注いだ雨が土地に潤いを与え、再び動き出す頃をあらわした言葉です。大地の“脉(みゃく)”が動き出すころ。
【次侯】第五候 霞始靆(かすみ はじめて たなびく)
春の霞が、たなびき始める頃

春が深まるにつれて、空気の表情もやわらかに変わっていきます。
朝や夕方の景色の中に、ふわりと漂う白い靄。それは、春の訪れを告げる「霞(かすみ)」です。
【末侯】第六候 草木萌動(そうもく めばえいずる)
朝日を浴びた山々で、霞がたなびき始める頃

春の陽ざしが少しずつ力を増し、やわらかな光が大地を包むころ。
霞がふんわりとたなびく山々では、草木たちがそっと動き始めています。
土の奥でじっと眠っていた命が、春の気配に誘われて、地表へと顔をのぞかせる時季です。