第五番 清明(せいめい)


第五番 清明(せいめい)

すべてが清らかに、明るくなるころ

春、いよいよ本格的に。
草木が芽吹き、花が咲き、命が息づく季節。
空は高く澄みわたり、風はやわらかく吹き抜けてゆきます。

朝、窓をあけると光がやさしく入り込み、
小さな葉が陽に透けて、薄緑の光を返してくれます。

昨日まで眠っていたような風景が、
ふっと目覚めたように色づき、動き出す。
そんな、生きものたちの気配が満ちる季節です。

春の雨に洗われたあとの空気には、
土の匂いや、どこか遠くで咲いた花の香りが混じっていて、
深く息を吸い込むだけで、心の底まで澄んでいくような気がします。

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【清明】とは

「清明(せいめい)」は、二十四節気の第五番目にあたります。
清らかで、明るい──その名のとおり、
万物がいきいきと息づく、美しい季節のはじまりです。

例年、清明は4月4日ごろ。
気温もぐんと上がり、桜の季節が過ぎると、
たんぽぽ、つくし、れんげなど、
春の草花が次々と姿を見せてくれます。

また、空が澄んで明るく、風景がくっきりと見えることから、
古くから「清明のころの空模様」は、
人々の心を晴れやかにするものとされてきました。

この時期には「清明祭(せいめいさい)」と呼ばれるお墓参りの風習が
沖縄などに残っており、春の訪れを祖先とともに喜ぶ大切な時期でもあります。

新しい命の芽吹きと、受け継がれる命への祈りが交差するとき。
すべてが、ゆっくりと、確かに、動き出しています。

2.清明の【ならわし】


季節の変わり目に、暮らしを見つめ直す

「清明」のころは、草木が芽吹き、花が咲き揃い、天地が明るく澄んで見える時期を指します。
春分を過ぎると日本各地、完全に季節が移り変わります。
それは、全国各地で人々の暮らしの中で「春を寿ぎ、祖先を敬う」行事が行われる合図。

「春の命の芽吹き」と「人の暮らし」を結びつけるもの。
清らかな季節を、自然とともに迎える心が込められています。

墓参りと祖先供養(清明会・清明供養)

清明の頃には、お墓をきれいに掃除し、花や供物を捧げる習わしがあります。
春のお彼岸の墓参りに続き、草木が芽吹くこの季節に改めて先祖に感謝を伝えるものです。

中国では「清明節」として盛んに行われ、お墓参り(掃墓)に加えて、春の野山を歩く「踏青(とうせい)」や凧揚げなども楽しみます。日本でも地域によっては「清明供養」と呼ばれ、春と祖先を結びつける大切な行事として受け継がれています。


花祭り(灌仏会 かんぶつえ)

4月8日は、お釈迦さまの誕生日を祝う「花祭り」。
寺院では花で飾られた小さなお堂(花御堂)に誕生仏を安置し、甘茶をかけてお祝いします。
桜や春の花の盛りと重なるため、まさに「花の祭り」と呼ぶにふさわしい華やかさがあります。子どもたちも甘茶をいただいたりと、春の訪れを喜ぶ年中行事です。


🎎 十三詣(じゅうさんまいり)

数え年十三歳になった子どもが、虚空蔵菩薩にお参りする行事。智恵と福徳を授けてもらい、無事な成長を願います。
京都・嵐山の法輪寺が有名で、特に女の子が初めて本格的な晴れ着で参拝する風習は、子どもの成長を祝う大切な節目です。七五三ほど広くは知られていませんが、「十三詣」は忘れがちな春の通過儀礼のひとつです。


🌾 農事始め

清明は、農作業の本格的な始まりを告げる目安とされてきました。
冬の間に整えた畑を耕し、田植えや種まきの準備に取りかかる頃です。
「清明に種をまけば芽がよく育つ」といわれるほど、農村にとっては大切な節気でした。


🍃 端午の節供の準備

五月の端午の節供に向けて、菖蒲やよもぎを摘み始めるのもこの時期です。香り高い草を家に飾ったり、邪気を払う準備をすることで、季節を先取りする知恵が息づいています。


🌸 花見・野遊び

ちょうど桜が満開になる頃でもあり、家族や仲間と花を愛でる「花見」が盛んに行われました。
神仏や祖先に花を供える習わしもあり、自然を寿ぎ、霊を敬う心が結びついています。
また、中国の「踏青(とうせい)」のように、春の野を歩いて遊ぶ風習も、日本の「野遊び」として伝わりました。

雨水の【七十二候】

雨水のころの「七十二候」をご紹介します。

雪解けと共にじんわりと動きだす大地。
季節が動き始めるのは、まずは水の流れから。

初侯第四候 土脉潤起つちのしょう うるおいおこる

冬の間、かたく凍りついていた大地が、ほんのりとやわらぎはじめる季節。



空から舞い降りていた雪は、いつしか静かな春の雨へと姿を変え、その雫は土の奥深くまで沁みこんでいきます。
「土脉潤起(つちのしょう うるおいおこる)」とは、降り注いだ雨が土地に潤いを与え、再び動き出す頃をあらわした言葉です。大地の“脉(みゃく)”が動き出すころ。

次侯第五候 霞始靆(かすみ はじめて たなびく)

春の霞が、たなびき始める頃



春が深まるにつれて、空気の表情もやわらかに変わっていきます。
朝や夕方の景色の中に、ふわりと漂う白い靄。それは、春の訪れを告げる「霞(かすみ)」です。

末侯第六候 草木萌動そうもく めばえいずる

朝日を浴びた山々で、霞がたなびき始める頃



春の陽ざしが少しずつ力を増し、やわらかな光が大地を包むころ。
霞がふんわりとたなびく山々では、草木たちがそっと動き始めています。
 土の奥でじっと眠っていた命が、春の気配に誘われて、地表へと顔をのぞかせる時季です。

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