七十二候

七十二候― 日々の季節を、細やかなまなざしで ―

「七十二候(しちじゅうにこう)」とは、一年を通じて訪れる自然の変化(二十四節気)を、より繊細に、より身近に感じ取るために生まれた、古来の暦の表現です。
もともと中国で作られた気象観察の区分で、やがて日本の風土に合わせて調整され、今に伝わる形となりました。

一年を二十四の節気に分ける「二十四節気」が、季節の大まかな節目を示すのに対し、「七十二候」はそれぞれの節気をさらに三等分し、わずか五日ごとに移ろう自然の姿や動植物の営みを言葉にしています。
つまり、二十四節気が1年を24に分ける暦であるならば、七十二候はそれを72に分けた、よりきめ細やかな季節のカレンダーとも言えるでしょう。

その内容は、たとえば「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」「玄鳥至(つばめきたる)」など、詩のような美しい表現で綴られています。それぞれの候には、農作物の発芽や花の開花、鳥や虫の動きといった自然界の営みが繊細に映し出されており、まるでその季節の「音」や「香り」までも感じ取れるような言葉が並びます。
七十二候の言葉を通して、空の色の変化、鳥の鳴き声、草木の芽吹きにふと気づく瞬間が生まれるかもしれません。自然の中にある微細な変化を見つけること、「こうして今、変わっている」と、確かに言葉として捉えること。
それこそが、季節をめぐる日本人のまなざしの原点ともいえるのかもしれません。



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