末候 第15候 虹始見(にじ はじめて あらわる)


春の雨上がり、空にかかる初めての虹

春の空に、はじめて虹が姿を現す頃を「虹始見(にじ はじめて あらわる)」と言います。しとしとと降り続いた春の雨がやみ、透き通るような空気の中に、ふと現れるその七色の橋は、季節の変わり目を優しく告げてくれます。

春から夏にかけて、大気は不安定になりやすく、突然のにわか雨や夕立が増えてきます。そんな雨のあと、西の空にかかる虹は、まるで自然がこっそり見せてくれる小さな奇跡のようです。虹は一般に「夏の季語」とされますが、春の虹は特別な趣を持ち、古くから詩や俳句で愛されてきました。秋にもまた「秋の虹」として、その繊細な姿が詠まれます。

七十二候の中で、この「虹始見」は、晩秋の【小雪】の初侯にあたる「虹蔵不見(にじ かくれて みえず)」と対をなしています。晩秋には、日差しの力が弱まり、虹が見えなくなる季節が訪れますが、春はその逆。陽の光が戻り、雨の後に虹が美しく現れるようになるのです。

虹は太陽の光が雨粒の中で屈折し、七色に分かれて空に架かる自然のプリズム。その一瞬の輝きに、私たちは生命の豊かさや、季節の巡りの美しさを感じ取ります。空にかかる虹は、長い冬の名残が徐々に消え、新しい季節への希望と喜びを静かに映し出しているかのようです。

春の空にかかる虹は、心の中にそっと灯る小さな明かりのよう。忙しさの中でもふと立ち止まり、目を上げてその優しい彩りに触れてみませんか。雨の匂いや柔らかな風とともに、虹は春の訪れを祝福し、私たちの暮らしにしっとりとした彩りを添えてくれるでしょう。

自然のなかで織りなされる色の調べに、心をゆだねる。そんな穏やかな時間が、今日という日をより豊かなものにしてくれるはずです。

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