第三候 魚上氷(うお こおりをいずる)

—割れた氷の間から魚が飛び跳ねる頃—

寒さの厳しい日々を越え、ようやく水辺に小さな変化が訪れます。
川面に張っていた氷が、少しずつとけはじめ、きらりと光る薄氷(うすらい)へと変わっていくころ。
その下では、すでに春を感じとった魚たちが、静かに、そして確かに動き出しています。

「魚上氷(うお こおりをいずる)」は、文字どおり、魚が氷を割って現れるような光景をあらわしています。
もちろん実際には氷を割って跳ねるわけではありませんが、流れの底でじっと冬を越していた魚たちが、日ごとに和らぐ水のぬくもりに誘われて、ひらりと泳ぎ出す。
そんな命の息吹に満ちた、春の兆しを表した、美しい言葉です。

薄氷とは、ほんの少しの衝撃で壊れてしまうほど繊細な氷。
その下を、命が自由に泳ぎはじめていると想像すると、自然のたくましさと同時に、どこか優しさや希望のようなものが感じられます。

水辺にそっと立ち、耳を澄ませてみると、氷のきしむ音や、水がかすかに流れる音が聞こえてくるかもしれません。
その静けさのなかには、確かな春の息吹が溶け込んでいるのです。

春はまだ遠く、朝晩の冷え込みも油断できません。
けれど、季節は確実に歩みを進めています。
生き物たちはそれを知っていて、春の扉をそっと押し開ける準備を始めているのでしょう。

うららかな陽ざしに包まれる春までもう少し。
その前の、静かで繊細な時間を、心でそっと感じてみませんか。

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