第一候 東風解凍(はるかぜ こおりをとく)

—春は氷の下からはじまります—

春の風が川や湖の氷を解かし始める頃。

まだ寒さは厳しいものの、空の色がわずかに明るく感じられるようになり、
風の音にも、どこか軽やかさが混じってくる。
足元では、ふくらみはじめた蕾に気づくこともあるでしょう。

二十四節気「立春」の初候にあたる七十二候「東風解凍(はるかぜ こおりをとく)」は、春の最初の兆しを告げる、美しい言葉です。
暦の上で春が始まる立春の頃、まだ冷たい風が吹く中にも、ほんのりとやわらかな東風(こち)が現れ、凍てついた大地や湖面の氷をゆっくりと解かしていきます。

「東風(こち)」とは、東から吹くやわらかな風のこと。旧暦では東は春の方角とされており、この風が吹くことは、春の訪れの合図でもありました。
一見、まだ冬のような空気の中でも、耳を澄ませば風の音がやわらぎ、手
をかざせば空気の冷たさがすこしやわらいでいるのを感じるかもしれません。

「解凍(こおりをとく)」という表現には、自然が少しずつゆるんでゆく、やさしい時間の流れが込められています。硬く閉ざされていた大地に、しみわたるように春の気配が届き、氷の下では静かに命の目覚めが始まっているのです。

風が吹くたび、畑の霜は次第にゆるみ、用水路の氷も少しずつ音を立てて解けてゆく。
まだ寒さは厳しいものの、空の色がわずかに明るく感じられるようになり、
風の音にも、どこか軽やかさが混じってくる。
足元では、水が動き出し、土がほだされていく。

春は、華やかな花の色や、あたたかな陽ざしとともに語られることが多いですが、その始まりはもっとひそやかで、目に見えない変化の中にあります。
まるで、土の奥にそっと芽吹く気配のように、春は、氷の下から静かに静かに、生まれてくるのです。

そのほんのかすかな変化に気づくとき、
私たちの心にも、春の灯がともりはじめるのかもしれません。



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